【銘柄評価②】インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は分配余力が豊富な毎月分配型投資信託

銘柄評価シリーズ

配当金生活診断の第2弾です。

今回は個別株式ではなく、毎月分配型投資信託のインベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)です。

毎月分配型投資信託は、1か月ごとに決算を行い、収益の一部を毎月分配として支払う運用方針の投資信託です。

毎月分配による課税や元本払い戻しにより運用効率が悪くなるデメリットがありますが、定期的な収入として生活資金の一部にすることができるため、ニイマルクの配当生活のためのポートフォリオ候補に入っています。

毎月分配型投資信託の投資指標


①実質分配金利回りは10%程度あるか
②分配金余力は豊富で、今後も同水準の分配金が期待できるか
③分配金健全度が高く、運用収益から分配金が支払われているか
④基準価額は下落傾向でないか
⑤償還期限は無期限か
⑥信託報酬は高すぎないか
⑦純資産残高は減少していないか(参考程度)

インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)の概要

当ファンドは株式投資の王道として、①成長+②配当+③割安を追求し、厳選した日本を含む世界株式(エマージング国を除く)を運用対象にしています。

出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(月次運用レポート)

ニイマルクは人生100年時代を見据えて50歳までの脱サラを計画していますが、当ファンドのレポートにも人生100年時代に備えることが掲げられており、株式投資の3つの王道にこだわるスタイルにも共感できます。

ちなみに、インベスコ世界厳選株式オープンは4シリーズのファンドが設定されています。

資産残高から、②の為替ヘッジなしの毎月決算型が圧倒的人気であることがわかります。

ファンド名純資産残高
①インベスコ世界厳選株式オープン
<為替ヘッジあり>(毎月決算型)
32.7億円
インベスコ世界厳選株式オープン
<為替ヘッジなし>(毎月決算型) 
↑今回紹介するのはコチラ
1689.6億円
③インベスコ世界厳選株式オープン
<為替ヘッジあり>(年1回決算型)
6.4億円
④インベスコ世界厳選株式オープン
<為替ヘッジなし>(年1回決算型)
56.5億円
出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(2022年7月末時点)

投資をする場合は4シリーズそれぞれの特徴を理解して、自分のニーズに合わせた選択が必要です。

今回紹介する②の特徴の一例には次のようなものが挙げられます。

為替ヘッジなし・・・現在のような円安局面では恩恵をうけますが、逆に円高に反転した際は基準価額低下のリスクとなるため、投資期間なども考慮して自分の投資方針に合わせた選択が必要です。

毎月決算型・・・現在のところ毎月、分配金を受け取ることができる一方で、そのたびに課税(普通分配)や元本払い戻し(特別分配)が発生するため、複利効果(運用効率)が低くなってしまいます。

普通分配金・特別分配金とは?

■普通分配金・・・自分の取得価額よりも決算日の基準価額が高い場合にファンドの運用益から支払われる分配金で、通常の配当金と同様に課税されます。
■特別分配金・・・自分の取得価額よりも決算日の基準価額が低い場合、分配金はファンドの運用益からは支払われず、非課税の元本払戻として分配されます。(払い戻しをされた金額分は、取得価額が低く修正されるので確認してみてください)

余談ですが、投資信託には愛称がつけられているものがあり、当ファンドは「世界のベスト」という愛称が付けられています。

色々なファンドの愛称を見ているとよく考えたなーと思うようなものが多くあり、投資対象として魅力的に表現するために一言にかける思いを感じます。

資金流入額がトップ1位

モーニングスターによると、今回紹介する〈為替ヘッジなし〉(毎月決算型)は2022年7月25日〜29日の週で、純資金流入額がトップだったようです。

あのeMAXIS Slimの人気シリーズであるオールカントリーや米国株式S&P500よりも多い流入額で、注目度が高いことがわかります。

設定日と償還日

■設定日:1999年1月に設定され、運用開始から20年以上の実績があります。

■償還日:無期限

ニイマルクはは中長期の運用を前提(※)としています。そのため、あらかじめ償還日が定められたものではなく無期限を選ぶようにしています。

※長期運用を前提とするのであれば、毎月分配でなく長期投資の最大メリットである複利効果を高める再投資が資産形成として効率的です。
 ニイマルクの当ファンドの保有目的は、サラリーマンの毎月給料に替わる将来の配当金生活をイメージしたものであり、運用効率が低くなるジレンマを受け入れながら毎月分配を選択しています。

ベンチマーク

現時点では、ベンチマークにMSCIワールド・インデックス(円換算)を採用しています。

MSCIワールド・インデックスは、日本を含む先進国23か国を対象とした指数です。

MSCIワールド・インデックスから日本を除いた先進国22か国を対象とするMSCIコクサイ・インデックスをベンチマークとするETFや投資信託は目にしますが、MSCIワールド・インデックスはあまりないと思います。(ニイマルクが知らないだけかもしれまんせん)

ベンチマークとはファンドのパフォーマンス効果やポートフォリオのリスク評価を行う際の基準となる指標のことです。ファンドは中長期的にはベンチマークを上回る投資成果を得ることを目的としていますが、ベンチマークを上回る投資効果をあげることを保証するものではありません。

出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(月次運用レポート)

運用報告書などのレポートには、当ファンドとベンチマークの成績比較も記載されています。今後の投資方針についても触れられているので興味がある方は確認してみてください。

信託報酬

信託報酬は運用期間中に発生し続ける手数料で、当ファンドは1.903%とアクティブファンドのなかでも高めに設定されています。

もう少し低くしてくれると魅力度が増すのですが、これを上回る運用益を出し続けてもらえば問題ないので、ファンドチームに期待です。

組み入れ国・業種・銘柄

当ファンドの月次レポートで、組み入れの上位国・業種・銘柄を確認することができます。

直近ではイギリスの3iグループが組み入れ銘柄の1位ですが、2022年初はマイクロソフトが1位でした。

継続して見ているとリバランスの内容が興味深くなってきます。

■組み入れ上位5か国

順位2022年4月28日時点2022年5月31日時点2022年6月30日時点
アメリカ51.5% アメリカ50.1%アメリカ49.2%
イギリス15.3%イギリス15.4%イギリス16.0%
スイス7.7%スイス8.1%スイス8.5%
香港7.1%香港6.0%香港6.2%
フランス4.8%フランス4.9%オランダ5.5%
出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(月次運用レポート)

■組み入れ上位5業種

順位2022年4月28日時点2022年5月31日時点2022年6月30日時点
金融 23.5%金融24.3%金融25.0%
情報技術14.4%情報技術15.4%情報技術15.2%
資本財・
サービス
13.6%資本財・
サービス
15.0%資本財・
サービス
14.9%
一般消費財
・サービス
11.8%一般消費財
・サービス
12.0%一般消費財
・サービス
12.0%
生活必需品11.5%不動産8.3%不動産8.3%
出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(月次運用レポート)

■組み入れ上位10銘柄

順位2022年4月28日時点2022年5月31日時点2022年6月30日時点
13Iグループ
(イギリス)
5.4%3Iグループ
(イギリス)
5.6%3Iグループ
(イギリス)
5.7%
2アメリカンタワー
(アメリカ)
5.3%アメリカンタワー
(アメリカ)
5.2%友邦保険控股
(香港)
5.5%
3マイクロソフト
(アメリカ)
5.2%友邦保険控股
(香港)
4.9%アメリカンタワー
(アメリカ)
5.3%
4コカ・コーラ
(アメリカ)
5.1%ベラリア
(フランス)
4.9%ベラリア
(フランス)
4.7%
5ベラリア
(フランス)
4.8%マイクロソフト
(アメリカ)
4.5%マイクロソフト
(アメリカ)
4.6%
6友邦保険控股
(香港)
4.0%コカ・コーラ
(アメリカ)
4.2%コカ・コーラ
(アメリカ)
4.3%
7ブロードコム
(アメリカ)
3.8%ブロードコム
(アメリカ)
3.7%ブロードコム
(アメリカ)
3.4%
8プロブレッシブ・コ-プ
(アメリカ)
3.4%領展房地産投資信託基金
(香港)
3.1%スタンダ-ドチャ-タ-ド
(イギリス)
3.3%
9ペプシコ
(アメリカ)
3.1%ルンディン・エナジ-
(スウェ-デン)
3.1%チュ-リ-ッヒ・インシュランス・グル-プ
(スイス)
3.1%
10領展房地産投資信託基金
(香港)
3.1%スタンダ-ドチャ-タ-ド
(イギリス)
3.1%領展房地産投資信託基金
(香港)
3.0%
出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(月次運用レポート)

分配金情報

毎月分配型投信の場合、現在の分配金利回りに加えて、将来も継続して分配金を出し続けてもらうことが重要テーマです。

いくつかの指標を用いて、分配金情報を整理してみました。

分配方針

決算日は毎月23日(休業の場合は翌営業日)で、分配金は前期からの繰越金や基準価額などから決定されるようです。

このほか、3月・6月・9月・12月の決算時には、委託会社の判断で付加して分配されることもあるようです。

2017年から毎月分配を実施しており、現在まで為替ヘッジなしは毎月150円の分配金を継続して出し続けてくれています。

※あくまでも過去のデータなので、将来に渡って同様の分配金を出すかはわかりません。

分配金利回り(見かけの利回りと実質利回りの違い)

直近の2022年7月の決算日の基準価額8879円、過去1年間の分配金1800円から算出すると、見かけの分配金利回りは20.3%になります。

注)投資信託の分配金には元本払い戻しの特別分配を含む可能性があるため、分配金総額に対する普通分配金(収益から分配される分配金)の割合から実質利回りを算出することが重要です。上記のように現在の基準価額と分配金額から直接算出した20.3%は見かけの分配金利回り(特別分配を含む可能性あり)に当たります。
 分配金に特別分配金が含まれる場合は、見かけの分配金利回り>実質利回りになります。全額普通分配金の場合は、見かけの分配金利回り=実質利回りになります。

見かけの分配金利回りが高く魅力的に見えても、収益による普通分配を超えて元本払い戻しの特別分配の割合が多い場合はファンドの実力以上の分配金を出している可能性があります。

このため、収益である普通分配としてどれだけ支払われたのかを表す「実質分配金利回りを」確認することもオススメします。(最終的にはトータルリターンに着目することも重要です)

■実質分配金利回りの算出方法

 STEP①:見かけの分配金利回り(%)=基準価額÷1年間の分配金総額

  ↓

 STEP②:実質分配金利回り(%)=見かけの分配金利回り×分配金健全度(分配金に占める普通分配の割合)

分配金健全度

分配金健全度は、分配金のうち収益である普通分配金が占める割合のことで、100%が理想です。

分配金全額が運用収益の普通分配から出された場合は、分配金健全度は100%になります。一方、分配金全額が元本払い戻しの特別分配の場合は、分配金健全度は0%になります。

投資信託の運用中には信託報酬●%を支払っているので、毎月、特別分配として元本を払い戻しされ続けてしまうと銀行預金の低金利どころではなくなってしまいますね。

分配金健全度も毎月分配型投信の重要な指標で、次の①又は②により算出することができます。

①:(過去1年間の普通分配金)÷(過去1年間の分配金総額)

②:{(1年間の分配金額)ー(1年間の基準価額の下落額)}÷(1年間の分配金額)

②の方法で分配金健全度を算出


■直近1年間(2021年8月から2022年7月)における世界のベストの分配金健全度
・2021年8月の基準価額(9433円)
・2022年7月の基準価額(8879円)
・1年間の分配金1800円

分配金健全度:{1800円ー(9433円-8879円)}÷1800円×100=69.2%

前項の「見かけの分配金利回り20.3%」、本項の「分配金健全度69.2%」を用いると、

実質分配金利回りは20.3%×69.2%=14.0%と算出することができました。

※信託報酬の1.903%(年率)は、日々の基準価額に反映されて算出されているので、14.0%から改めて信託報酬額を差し引く必要はないと思います。その他の諸経費は省略しています。

分配金余力

分配金余力は運用報告書で確認することができ、現在の分配金水準を維持する余力の指標にすることができます。

出典:インベスコ・アセット・マネジメント(株)(2021年12月23日付け運用報告書)

現在のところ、2021年12月23日付けの運用報告書まで公表されています。

分配金余力の概算は、分配原資(翌期繰越分配対象額)を当期の分配金額で割って算出しました。

直近の第96期のデータでは、8992(円)÷150(円)で59.9か月分の分配金余力となります。

分配金余力が多い方が継続分配の観点から安心でき、ニイマルクは50か月以上を目安にしています。

毎月分配型投資信託で指摘されている課題

2017年に金融庁が公表した金融レポートで、毎月分配型投資信託の課題として「複利効果が働きにくいことに加えて、元本を取り崩しながら分配される場合には運用原資が大きく目減りして、運用効率を下げてしまう」ことが指摘されています。

出典:金融庁の平成28事務年度金融レポート (平成29年10月25日公表)
出典:金融庁の平成28事務年度金融レポート (平成29年10月25日公表)

また、同じく金融庁が公表している「資産運用業高度化プログレスレポート」の2022年度版においても、毎月分配型投資信託について2017年の金融レポート(5年前)と同様の指摘がされています。

出典:金融庁の資産運用業高度化プログレスレポート2022(令和4年5月27日公表)

最近、人気のある予想分配金提示型は、基準価額に応じて分配金の大小が決まるものの分配金自体は元本や運用収益から出されるものですね。

予想分配金提示型とは?

決算日の基準価額が高い場合は多くの分配金があり、逆に基準価額が低い場合は分配金の支払いが少なくなるものです。
例:・基準価額が11000円未満の場合:基準価額の水準を勘案して決める
  ・基準価額が11000円以上12000円未満の場合:分配金200円
  ・基準価額が12000円以上13000円未満の場合:分配金300円

毎月分配金ファンド自体が悪いのではなく、ファンドの収益に応じて分配金が支払われているかを見極めることが必要だと思います。

また、将来に備えて長期投資をするのであれば毎月分配よりも収益の再投資型の方が運用効率も上がることを理解した上で、自分に最適な選択をするために金融知識を高めていくことも必要です。

まとめ

投資指標評価コメント
①実質分配金利回りは
10%程度あるか
直近1年間の実質分配金
利回りは約14%で良好
②分配余力は豊富で、今後も
同水準の分配金が期待できるか
分配金余力は約60か月と豊富
③分配金健全度が高く、運用収益
から分配金が支払われているか
分配金健全度は69.2%で低すぎる
ことはないが、今後の注視ポイント
④基準価額は下落傾向でないか世界株式と同様に下落傾向だが、
分配金支払い額を加味すると
過剰な下落ではない
⑤償還期限は無期限か無期限
⑥信託報酬は高すぎないか×1.903%とアクティブファンドの
中でも高め
⑦純資産残高は減少していないか
(参考程度)
連続流入増で、早期償還のリスク
は低い
ニイマルク的、毎月分配型投信の投資指標まとめ

信託報酬は1.903%と高めですが、毎月分配に変更した2017年1月期以降は150円の分配金を継続している実績があります。

分配金の過去1年間の見かけの利回りは20.3%で、実質利回りは14.0%と良好でした。

当ファンドは設定日からは20年以上の運用実績があり、現時点では分配余力も十分ありますが、毎月分配に変更したのは約5年前の2017年からです。

懸念事項として、円高に反転した際や景気後退局面に突入した際などに、今後も分配余力の元となる分配原資を高水準で維持できるかの確認していく必要があると思っています。

その他、月次レポートではファンドリスクとして、価格変動リスク・信用リスク・カントリーリスク・為替リスクなどがあげられていますので、運用会社の各資料をご確認ください。

本記事は、2022年7月末までの情報を元に作成しています。
投資を推奨するものではありませんので、最終終的には最新の
公式資料を確認し、ご自身で判断してください。

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