【グローバルニッチトップ企業】高い競争力を持ち、世界市場で活躍する企業への配当金投資

グルーバルニッチトップ

グローバルニッチトップ(GNT)企業とは

グローバルニッチとは

ドイツのハーマン・サイモン氏によって提唱された「隠れたチャンピオンが経済を支えている」という概念をもとに経済産業省が定義した造語のようです。

グローバルニッチトップ(GNT)は、世界市場のニッチな分野(特定分野)で高いシェアを確保している企業で経済産業省が選定しています。

これまでに2014年と2020年の2回、経済産業省によって「グローバルニッチ企業100選」が選定されています。

ニッチ企業は業界トップ企業と競争するのではなく、特定の市場に経営資源を集中させて差別化を図り、独自の地位を築いています。

同一市場内でリーダーと呼ばれる大企業と競争するには、常に価格競争のリスクがあり、収益率が低くなってしまいますが、ニッチな分野でなくてはならないものを提供することで競争優位性を有します。

業界のリーダーと呼ばれる大企業には「規模の経済」等のメリットがあり、小さな企業が勝ち抜くことは容易ではありません。

そういった点においても、特定市場で差別化をしてシェアを高めるニッチ企業は、企業としての競争地位を意識した合理的戦略をとっています。

グローバルニッチトップ(GNT)企業100選

2020年6月に経済産業省が公募249社の中から113社を「グローバルニッチトップ企業100選」として選定しました。

前回の2014年は100社でしたが、2020年版は113社を選定しています。

このうち、13社は連続選定となっています。

2014年の選定後、①デジタル経済の進展・②世界の政治経済情勢の変動・③少子高齢化などの社会構造変化など、日本企業と取り巻く事業環境が変化したことから改めて2020年版として選定しています。

経済産業省がGNTを選定する目的

ニッチな分野で勝ち抜いている企業やサプライチェーンで重要性を増している企業を選定することで、対象企業の知名度向上や海外展開を支援することなどを目的としています

選定方法

選定は、①収益性・②戦略性・③競争優位性・④国際性の4項目を重視して審査がされたようです。

経済産業省がお墨付きを与えるだけあって、今後も世界市場で活躍し続けることが期待できる審査項目となっています。

また、下図のように大企業と中堅・中小企業者ではGNTの選定要件が異なっています。

出典:経済産業省(2020年6月公表)

選定結果

GNTは次の4つの分野に区分して公募が行われ、計113社が選定されました。

公募、選定ともに機械・加工部門が圧倒的に多いですね。

  1. 機械・加工部門(61社)
  2. 素材・化学部門(24社)
  3. 電気・電子部門(20社)
  4. 消費財・その他部門(8社)
出典:経済産業省(2020年6月公表)

選定結果の分析

113社の平均を見てみると、世界市場シェア43.4%、営業利益率12.7%、海外売上高比率45.0%と、期待通り世界市場で活躍している企業集団であることがわかります。

世界市場シェア43.4%
営業利益率12.7%
海外売上高比率45.0%
2020年版GNT113社の平均
出典:経済産業省(2020年6月公表)

注目すべきは今後の予想成長率で、選定された企業113社の提供する製品・サービスの5年から10年後の市場規模は2.21倍の伸びが予想されています。

出典:経済産業省(2020年6月公表)

投資対象としてのGNTへ特徴

高い技術力で世界になくてはならないものを提供するGNTは、投資対象のテーマ株として注目されています。

投資対象としてGNTを見てみると、次のような特徴があるのではないでしょうか。

特徴①高収益を確保し、景気変動の影響を抑える

経済構造の変化により製品・サービスの需要がなくならなければ、高いシェアを有するニッチ企業は競争優位性が高く、値上げ力などを背景にして景気変動の影響を受けにくい面があると思います。

特徴②経済構造の変化に伴うニッチ分野からの脱却と成長

ニッチな分野である限りは成長余地に限界はありますが、今後の経済構造が企業にマッチした形で転換しいくと、市場成長率の増加とともに業績も成長ステージに入っていく期待があります。逆に、衰退していくこともあり得るので見極めが必要になります。

「隠れたチャンピオン」という概念をもとにしていることを考えると、GNTは今は目立たない存在であっても潜在的な成長性を有している企業だと思います。

2020年版GNTにも選定されているレーザーテック(6920)は、テンバガーどころか100倍以上の株価になっていますね。

二イマルク的、配当金投資のための投資指標に合うGNT銘柄

今回は選定された113社のうち上場している46銘柄について、配当金生活のための投資戦略に合う銘柄があるのか見ていきたいと思います。

ちなみに、二イマルクは長期保有を前提とした投資方針で、将来的に高配当株での配当金生活を目標にしています。

二イマルク的、配当金生活のための投資指標

①株価は割高でないか
②自己資本比率は低すぎないか
③ROEは低すぎないか
④EPSは増加傾向か
⑤株主還元に積極的な配当方針か
⑥配当利回りは4%以上の高配当か
⑦期末の一括配当ではないか
⑧配当性向は高すぎないか

1次スクリーニング:配当利回り3.5%以上の10銘柄

46銘柄と数が多いので、まずは予想配当利回り3.5%以上で1次クリーニングをかけます。(通常は4%以上で見ていますが、対象銘柄が少なくなってしまうので、3.5%で設定しました)

他の指標が優れていても、二イマルクは低配当株は投資対象にはしていないのでご了承ください。

配当利回り3.5%を超えたのは46銘柄中、10銘柄のでした。(2022年10月15日時点)

一番の高配当株はフコク(5185)で、予想配当利回りは5.0%です。

2022年10月15日時点

ちなみに、2014年からの連続選定企業は13社で、この中では小森コーポレーション(6349)とエスペック(6859)が該当します。

2次スクリーニング:①年2回以上の配当支払い・②過去3期で減配なしの4銘柄

配当利回り3.5%以上10銘柄のうち、期末一括配当ではなく(年2回以上の配当がある)、過去3期で減配がなかったのはフコク(5285)、太平洋工業(7250)、旭化成(3407)、ソディック(6143)の4銘柄でした。

2次スクリーニングまでに残った4銘柄について、さらに詳しく投資指標を見ていきたいと思います。

候補銘柄①:フコク(5185)

GNTの選定対象となった製品・サービスは、新⾞装着⽤ワイパーブレードラバー(四輪⾞新⾞に取付けガラス⾯を拭くワイパーのゴム部分)です。

・GNT選定分類:機械・加工部門/中堅企業

・時価総額:176億円

・自己資本比率:50.4%

・海外売上高比率:49.1%

・ミックス係数:2.8(=PER6.0×PBR0.47)

2020年度2021年度2022年度
(予想)
EPS(円)77.9129.5167.8
配当金(円)224950
配当利回り(%)2.75.3
配当性向(%)28.237.831.7
ROE(%)4.26.57.9
BPS(円)18692002

候補銘柄②:太平洋工業(7250)

GNTの選定対象となった製品・サービスは、⾃動⾞⽤タイヤバルブです。

・GNT選定分類:機械・加工部門/大企業

・時価総額:652億円

・自己資本比率:52.8%

・海外売上高比率:59.5%

・ミックス係数:5.1(=PER13.5×PBR0.38)

2020年度2021年度2022年度
(予想)
EPS(円)139.4161.9158.1
配当金(円)334142
配当利回り(%)2.64.34.0
配当性向(%)2525.3
ROE(%)7.68.17.0
BPS(円)18592156

候補銘柄③:旭化成(3407)

GNTの選定対象となった製品・サービスは、再⽣セルロース繊維キュプラ(ベンベルグⓇ、ベンリーゼⓇ)です。

・GNT企業規模:素材・化学部門/大企業

・時価総額:1兆3513億円

・自己資本比率:50.4%

・海外売上高比率:48.1%

・ミックス係数:3.2(=PER6.7×PBR0.47)

2020年度2021年度2022年度
(予想)
EPS(円)57.5116.7118.6
配当金(円)343436
配当利回り(%)2.73.23.7
配当性向(%)59.129.130.3
ROE(%)5.610.39.0
BPS(円)10571216

候補銘柄④:ソディック(6143)

GNTの選定対象となった製品・サービスは、NC放電加⼯機です。

・GNT企業規模:機械・加工部門/中堅企業

・時価総額:437億円

・自己資本比率:55.2%

・海外売上高比率:70.8%

・ミックス係数:6.0(=PER8.2×PBR0.74)

2020年度2021年度2022年度
(予想)
EPS(円)25.1122.7121.0
配当金(円)252627
配当利回り(%)2.62.83.2
配当性向(%)58.787.320.6
ROE(%)2.310.07.8
BPS(円)10791386
DOE(%)2.01.92.0
※ソディックは配当政策にDOE2%以上を掲げているので、DOEも指標に加えています。

まとめ

4銘柄とも概ね良好な結果でしたが、太平洋工業(7250)は具体的な配当方針がないのが大きなマイナスポイントです。

ミックス係数は6以下で、株価はかなり割安です。

海外売上高比率が高く、世界市場で活躍している点は魅力的です。

少し気になるのが、ROEが想定よりも低いところです。
ROEは企業の稼ぐ力の指標で、8%以上になると株価上昇と関連性があると言われています。

投資指標フコク
(5185)
太平洋工業
(7250)
旭化成
(3407)
ソディック
(6143)
①株価は割高でないか
②自己資本率は低すぎないか
③ROEは低すぎないか
④EPSは増加傾向か
⑤株主還元に積極的な配当方針か×
⑥配当利回りは4%以上か××
⑦期末の一括配当ではないか
⑧配当性向は高すぎないか
二イマルク的、投資指標の評価

二イマルクの配当金生活投資としては、配当政策に配当下限(DOEを含む)と配当性向を組み合わせているフコク(5185)とソディック(6143)が候補になりそうです。

あとがき~日本企業の隠れたチャンピオン~

冒頭で記載したとおり、グローバルニッチトップはドイツのハーマン・サイモン氏が提唱した「隠れたチャンピオン」をもとに経済産業省が定義した造語のようです。

ハーマン・サイモン氏による「隠れたチャンピオンの定義」

①世界市場で3位以内か、大陸内で1位
②売上高が40億ドル以下
③世間から注目度が低い

ハーマン・サイモン氏が「隠れたチャンピオン」として挙げている日本企業もあるので、グローバルニッチトップ企業に興味を持った方は確認してみると参考になるかもしれません。

出典:経済産業省(2019年6月公表)
出典:経済産業省(2019年6月公表)

本記事は投資を推奨するものではありません。
また、数値に誤りがある場合もありますので、最終的にはご自身で確認した上で判断してください。

コメント

  1. ヘム より:

    ニイマルクさん、こんにちは。面白い視点からの記事ですね。フコクは面白いですね。

    • ニイマルク ニイマルク より:

      ヘムさん
      コメントありがとうございます。
      配当金生活のための投資対象を模索しているなかで、グローバルニッチトップに着目しました。
      ヘムさんも紹介していたDOE銘柄のソディックにも注目しています。

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